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    愛と幻想の日々

妄想後悔









過ぎた特定の日をふと思い出す新宿西口地下交番前を行き交う不特定多数の私の知らない無数の男と女が上手から現れ下手から現れ下手へ上手へと消えてゆくのに今わたしは誰とも待ち合わせなどしていない。いかにも待ち合わせをしているような振りをしてコンクリートの柱に背をもたせながら、冷房の風が届かない湿った地下の空気の中で、あの日の残酷さを思い心が切り裂かれるような後悔の痛みを覚えている。

世界が諦めと希望で交錯していた時代。それでも誰も世界が縮小してゆくなど思いもしなかった時代。世界が幾層もの現実で折り重なるように存在しているなど思いもよらない時代。いま世界はすべてを失おうとしている。何かが終わる。

だから、まだ終わりなど信じなかった時代の待ち合わせの日の、あの残酷を思う。駄目になったわたしのひと言が呼び起こした悲劇の記憶が消えないように、今わたしはジッと眼を凝らして無数の名無し広場に佇んでみる。

暗号に満ちた言葉たちの中に埋もれていることの心地よさが偽の人生そのものであることなど先刻承知なのだが、それでも表1、あるいは絵3を用いなければ読めない暗号を羅列する以外に、あの仕打ちを心に留めておくことが出来ない。ページの余白に、あの日の声の震えや、光沢のある床に落ちた影の輪郭を忍ばせながら。

“葉月八月、夏は蜃気楼”様へひと言申し上げます。あなたの未来ある希望に満ちた堂々とした明るさに包まれた命を奪ったのはわたしです。わたしこそが首謀者であり、あの時代でも、あの悲しみでもありません。どのような世界から引き継いだものであるのかなどと、その因果の中に素因を求めるような問題ではありません。存在するわたしこそが全ての首謀者であり、実行者であるのです。

纏わり着く熱い空気に身動き取れないまま、いつのまにか拡がり熔けていく希釈された存在感。

まだまだこれから先に於いて、暗号に満ちた世界を作り上げることに腐心する喜びは、いずれ決して口にしてはならない言葉を用意します。(敬具)

“葉月八月、夏は蜃気楼”様、わたしは深く後悔しています。けれど決してこうは言いたくない。

「世界が狂っている」・・・狂っているのは、この……












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