 
 詩題:魂の降り立つ場所
冬を超え ひと時の安らぎの地を求め
垂れ込める黒い雲の下 長い間飛び続けた
どの地も 過ぎし日の 美しき魂の面影なく
獰猛な黒い怪物が爪を立てて空を掻く
枯れた一本の樹の 骸となった枝先で
束の間の休息を取るばかり
樹を揺する黒い邪悪は
奇怪な笑い声をたてながら 地に落とそうとする
かつてこの地は 美しき安息の花畑であった
かつてこの地には 笑いがあり 情けがあり 深い愛があった
死は手厚く記憶され 哀しみは暖かき手に包まれ
希望を胸に明日へ向かう 魂の森だった
枯れた一本の樹だけが かつての魂の影を屹立させている
翼の休息をさえ 絶望に変える
爪をたて 涎をながしながら見上げる怪物
その声が聞こえない場所が見つかると信じて 翼を広げるしかない
痛んだ羽を修復する時間さえないが
飛び続ける他はない
地に降り立つことは もはや赦されない
そこは 怪物により荒廃し
かつての記憶の地ではなくなった
こうして飛び続けること
空のただなかにあること
それこそが
唯一 魂の降り立つ場所となった
,※ この詩篇を書き終えて、なんども読み返した。連れが隣の部屋で休んでいる。私は声を出さずに慟哭した。悲しくも絶望的な未来を思い描いたのだと思った。だが、この魂は、この地の魂たちは永劫に屹立するものとして飛翔すると信じたい。
.