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雪が海に降る
 灰色は
   海と空をほどき
   境い目を眠らせる
ブランケットの重みの奥
 足元に
 かすかな潮の匂いが忍び寄る
「韃靼」──
 だったん
   ダッタン
     dattan
 音の粒は
 古い水脈を伝い、
 忘れられた港の鐘を鳴らす
404キロメートルの海の向こう
 大陸のいにしえが
  風砂に埋もれた城壁の影を
  月光の下で息づかせている
崖下の列車が
 波間を疾走すると
 その影は
  海の裏側で静かに揺れ、
  わたしの胸をかすめて消える
わたしは
 その記憶の水脈に触れられぬまま
 遠い時のほつれを
 指先でほどこうとする
大陸から吹く
 見えぬ風が
 雪をひとひら
  この窓辺まで運んでくる
(※ ユーラシア404に捧ぐ)
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